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言いたいことがなにもない

プライベートな日記です

2016年6月までの面白かった本10冊

ずっとこの半年間で読んで面白かった本を10冊選んでブログに書いている。結構溜まってきた。

今年読んで面白かった本10冊 - はてなの広告営業 mtakanoの日記(2010年)

 

忘れられた巨人

楽しみにしていたカズオ・イシグロの新刊。いつものカズオイシグロに比べると、世界観やストーリーテリングが多く、文章や情景描写の美しさに没頭するようなところは少なかった気がする。やはりファンタジー形式の作品だからそうなったのだろう。


だが、この寓話によって気づかされるのは、現実の我々の世界の残酷さ、どうにもならなさだった。主人公がたどり着いた対立の構図は、絶望的だ。カズオ・イシグロは世間的にも重要な作家になったので、彼が表現をすることは、すなわち世の中への責任を引き受けるということになってしまったのかもしれない。

その上でさらにその先にある最後のシーン。悲しいけれど、この圧倒的な美しさはカズオイシグロ随一だった。


このシーンの切なさがずっと心に引っかかっている。これを読んでいて思い浮かべた情景は、もう忘れることができないだろう。

忘れられた巨人

忘れられた巨人

 

 

 

機龍警察 暗黒市場

昨年からこの機龍警察シリーズに嵌ってしまっていた。最初の作品の冒頭はわかりづらく読みづらいしパトレイバーのようだな、と思っていたけれど、読み進むごとにどんどん面白くなる。

ただのSF犯罪小説ではなく、コンゲーム的な要素であったり、警察内の政治的駆け引きであったり、知的なバトルが多いのがこの作品の特徴だと思う。

そしてドラマがある。熱くてクールでハードボイルド。

この機龍警察サーガは、複数人の主人公がいて、うち3人の超人的な能力を持つ傭兵が特に重要人物だ。その中の一人、元ロシアの警察官だったユーリが今作の主人公。一見感情が無さそうな3人の傭兵の中でも、実は浪花節的な姿を垣間見せていた人物だ。だから彼の強さだけでなく、みっともないくらいの弱さが書かれていて、そしてそれを克服する姿も書かれている。とてもエモーショナルだった。 

 

機龍警察 暗黒市場

機龍警察 暗黒市場

 

 

機龍警察 未亡旅団

そして機龍警察サーガは、続編になるごとに凄みを増していく。

今作では「取り調べ」という章での、ドラマチックで汗握る心理戦のやり取りがすごい。どうやったらこんな作品が書けるんだろう。そしてチェチェンの深い闇と悲しさをしっかり描いたことに凄みがある。スケールが大きい。

今作の敵は、チェチェン紛争で親愛なる人々を失った女性のみで構成されたテロリスト集団だ。中には少女も多くいる。テロリストとはいえ、彼女たちにも曲げられないものがある。機龍警察の中でも、最も救われない絶望的な話だ。

しかし、最後の最後に救われた気分になった。泣いた。圧倒的な物語だった。今のところシリーズ最高傑作ではないか。

 

機龍警察 未亡旅団

機龍警察 未亡旅団

 

 

シャオミ 爆買いを生む戦略

ユーザーを大事にする会社の戦略は、これまでたくさん語られてきた。しかしシャオミの戦略はシャオミにしか取れない。それでも、筋の通った徹底的な施策は、やはり成功を収めるし、人の心を動かし続けていくのだと思った。

また、中国のマーケットの広さが改めてすごい。ソーシャルメディアを使うと効果があるというのは、中国くらいの規模感が無いと生きてこないのではないか。まああれだけの多様な人々に、好意的な支持を受ける施策をうったシャオミが本当にすごいのだろう。

中国の文化のわずかな違いも含めて楽しめる。爆買いというタイトルは余計。

 

 

お母さんの「敏感期」―モンテッソーリ教育は子を育てる、親を育てる

簡単に読めるが、示唆が多い。前半は脳科学の話で正直少しつまらないが、事例とともにモンテッソーリを教えてくれるパートになると俄然面白い。子育ての状況が目に浮かぶ。

早速この本の考え方を真似て、娘が集中していることをできるだけ邪魔せず、娘が何を欲しているかに集中し、娘に自律してもらうための行動を手本として集中させてみた。そしたら歯磨きとうがいが楽しく簡単に一緒にできるようになった。何かに集中しているときは、大人があきらめるしかない。そうしてあげると、すっきりと次の行動に向かってくれるので、娘の納得がいくだろうし、結果的には全てがスピーディに進むんだと実感している。

 

 

学びとは何か――〈探究人〉になるために

まさしく学びとは何かの本だ。子どもを見ていると、すごい速度で世界を学んでいくものだと思う。もし自分がどこか全く知らない言葉ばかりの外国にふとやってきたとして、子どものように楽しく恐れず、すごいスピードでコミュニケーションができるようになっていくだろうか?子どもは単語をそれ単体で覚えるのではなく、システムの中で相互に関連付けながら体得していくのだ。

子どもが小さいうちに読んだことで、ああ今この子はこうやって世の中を学んでいるのか、ということを自分が実感しながらこの本で書かれていることを体感できた。新しい目で世の中を見て、誤ったスキーマも見直していかなければならない。

知的能力の大部分は遺伝によって決まるという、納得できる説も読んで暗い気持ちにもなったが、こういった本を読むと、それでも探求していく、学んでいく姿勢の素晴らしさを知ることができる。

学びとは何か?〈探究人〉になるために (岩波新書)

学びとは何か?〈探究人〉になるために (岩波新書)

 

 

USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門

マーケティング関連の本は、かなり概念や学術的内容が多くなってしまう。もしくは筆者の実務的な経験が中心に語られてしまう。しかし、この本はマーケティングを学術的に勉強された筆者が、実務ベースにマーケティング事例を語っている。

ものすごく腑に落ちる。努力家だし、すごい人だと思う。読んでいて劣等感にさいなまれるレベルだった。

 

ストーナー

とても良かった。日本語訳が発売されたのは 2014年9月だから今から1年半前だ。そもそも本書か出たのは1965年。確かに今では出せない小説かもしれない。

物語はある大学教授が 生まれて死ぬまで本当になんでもない、ただの一生を描いている。 特にひねりもないし不思議な出来事も起きない。このような唯人の一生を描くだけの、いわゆる文学作品はもうなかなか書かれることはない。一言で紹介するようなフックもないし、売れ筋ではないのだ。

しかしここで書かれた何でもない人生、生き方、その文章と世界観はとても美しい。 ストーナーの遅れてきた青春、仲間たちとの交流、文学に目覚める瞬間、やがて夫となる女性に出会う瞬間、子供への愛情、家庭の不和、不倫、死、全てリアリティーだ。なんでもないのに深く心が揺さぶられる。

この本の9割は東江一紀が訳したという。ドンウィンズロウの「犬の力」や、別名で「文明崩壊」を訳した、とても偉大な方の最後の翻訳作業となったらしい。
ポールオースターや村上春樹が好きな人もきっとこの本は好きになるだろう。オースターや春樹のように不思議な出来事が起きないけれども、この本の文体を読んでいる時の、心が静かにゆっくりとしていく感覚がとても似ていた。
ストーナー

ストーナー

 

 

失われた夜の歴史

電気ができる前、人は夜をどのようにして過ごしていたのか。一日の半分が暗闇に包まれていた時代。現在ではもう想像も及ばない時代。

その時代、夜にまぎれて行われた暴力、夜の中ではぐぐまれた友人たちや男女同士の営み、悪魔的存在、権力から解き放たれた闇であり権力が取り締まろうとした世界、眠りの世界はどんな様子だったのかが、あらゆる文献を元に語られる。

人は真っ暗な夜の中を、手探りで、記憶を頼りに宴会や恋人の元へ出かけていったらしい。昔も人間は変わらなかった。ただ驚いたのは、昔は第一の眠り、第二の眠りがあり前のようにあったということだ。その間に仕事をしたり、瞑想したりしていたようだ。

昔はこうだった、というが、過去にあった人の眠りの世界は失われ、電気の光とともに人の生活様式は大きく変わったのだ。 

失われた夜の歴史

失われた夜の歴史

 

 

 

「全世界史」講義 教養に効く!人類5000年史

この本があれば、もっと世界史に臨場感と物語性をもって学べたのかもしれない。歴史を振り返ることは人間を知ることだとよくわかる。

学校で教わってきた世界史は、四大文明オスマン・トルコ帝国こそ出てくるものの、どこかヨーロッパ中心だった。しかし、昔はアラブとヨーロッパが中心、というか一時期のヨーロッパはアラブ世界に比べれば遥かに野蛮な世界だったことがわかる。

でもそのようなアラブ世界も、地形、宗教、技術の発展、いくつかのたまたまな要因によって逆転してしまうのだ。