この半年読んで面白かった本10冊まとめ(2015年7~12月まで)
毎年「今年読んで面白かった本」を10冊選んでブログに書いている。去年からは半年に一回まとめるようになった。
今年読んで面白かった本10冊 - はてなの広告営業 mtakanoの日記(2010年)
今年読んだ本のマイベスト10 - はてなの広告営業 mtakanoの日記(2011年)
今年読んで面白かった本10冊(2012年) - はてなの広告営業 mtakanoの日記
今年読んで面白かった本10冊(2013年) - 言いたいことがなにもない
面白かった本10冊まとめ(2014年1月~6月まで) - 言いたいことがなにもない
面白かった本10冊まとめ(2014年7月~12月まで) - 言いたいことがなにもない
この半年読んで面白かった本10冊まとめ(2015年6月まで) - 言いたいことがなにもない
この半年も、色んな面白い本に出会えた。中でもうち10冊をまとめてみる。しかし、なんでこんなに微妙にタイトルを変更しているのだろう。。
学力の経済学
このように、学術的に相関関係が成り立つ教育施策が紹介されている事例を読むと、いかに日本の教育が統計や論理に基づいていないのかと思う。子育てや教育は、誰もがそれに関わってきたものだから、誰もが専門家になり、感情的で直感的で、さらには伝統に沿った思考停止な判断がなされてしまう。この本ではそれについての警鐘が鳴らされる。
ただ、読めば読むほど、では自分の子供をどうするか?を考えると、一言で言えば子供の勉強にしっかりと時間とお金を費やしてあげる、という結論になるのがやるせない。まあそれはしょうがない、そのために日々頑張るしかないよな…。一方で子供の貧困という現状を知るほど、未来に絶望的にもなる。
他の幼児教育の本にも書いてあったが、子どもの学力においては非認知的スキルを身につけることが大事、という説もトレンドになっている。しっかり子供に目を向けて、1日1日を大切に過ごしていきたい。
愉楽
中国から生まれた発禁?相当のマジックリアリズム小説。実際に発禁になったのかな。
前半はその長さに挫折しそうになるが、後半は一気読みだった。障害者たちだけで暮らす村にもたらされた共産主義と政府の手によって、村の平和を破壊されていく様が、寓話的に中国のある側面を暴いてみせる。障害者による絶技団、レーニンの遺体の購入による再建計画、完全人の嫉妬と模倣、一人の優れた美貌を持つ娘の妖艶さ、お金による人の変貌など、この小説の中にあまりにも多くのメタファーが込められている。正しく小説によって構築された一つの世界。
作者のあとがきで、書くことは苦痛でしかないがどうしても書かずにいられない、という業が告白されているが、それもうなづけるくらい、作者の血が流れている本だった。
ワーク・ルールズ!
日本語訳を待ちに待っていたGoogleの人事についての本。ちょうどたくさん面接をしていた時期だったということもあり、とてもためになった。
仕事に意味をもたせる、人を信用する、自分よりも優秀な人だけを採用する、発展的な対話とパフォーマンスよマネジメントを混同しない、二本のテールに注目する、カネを使うべき時は惜しみなく使う、報酬は不公平に払う、ナッジ、高まる期待をマネジメントする、そして楽しむこと。どうやって採用面談に望むか、面接の質問の仕方、みんなで教えあうこと、業績評価、報酬やインセンティブ、ナッジによる示唆など。
これらはなにもGoogle独自の施策ではない。しかしGoogleが何よりもすごいのがトライアンドエラーとABテストを繰り返し、統計的に改善を試みていることだ。そしてGoogleのミッションを信じていること。人事や採用の考え方だけでなく、マネジメントにおいても勉強になった。
悪霊
自分の一番好きな小説。今までに繰り返し読んできたが、今回読んだのは5年ぶりだった。自分が歳をとったからなのか、亀山さんの訳が分かりやすいのか、これまで何度も読んできた本のはずなのに、新たな気づきも多く、世界も広く感じられた。
世界最高のリーダー育成機関で幹部候補だけに教えられている仕事の基本
GEで教えられている仕事の基本について。仕事の基本とはいえ、GEの人々なので、語られる目線はマネジメント、経営層向けくらいに濃い教育内容。この本から得たものはいくつもあるが、最も大きかったのは、自分の仕事におけるキーワードを3つ書き出すというもの。うち1つは「貢献」で、これまで考えてきたことが腑に落ちて、そしてこれからやっていきたい方向性が定まってきた。
世界最高のリーダー育成機関で幹部候補だけに教えられている仕事の基本 (角川書店単行本)
- 作者: 田口力
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2015/03/01
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ニッポンの貧困 必要なのは「慈善」より「投資」
そもそも格差というものは生まれてしまうものであるが、貧困は根絶しなければいけないものだ。全てはその前提によって語られなければいけない。なぜか自己責任がまかり通ってしまうが、これを経済の観点でとらえたとしても、貧困問題にかかっているコストが解消され、その上労働力が増えて税収が増すことから考えても当たり前だ。
この考え方が日経ビジネスで語られたことに意味がある。貧困に同情的な視点に偏って書かれるのではなく、徹底してジャーナリスティックに貧困の現状を見つめた姿勢がすごい。貴重な本。
人工知能は人間を超えるか
とにかく分かりやすい。コンピュータが知能を持つ上でこれまでできたこと、できなかったこと、限界だったことがまず整理される。それからディープラーニングによってコンピュータが概念を学べたことがどれだけ大きな進化だったのか。そして、日本は改めて人工知能に力を入れるべきと提言される。僕のような非エンジニアにもディープラーニングとは何か、そして人工知能の現状が大まかにわかる凄い本。
チェルノブイリの祈り
めくった二、三ページですでに圧倒された。チェルノブイリを経験した人たちへのインタビュー集と言ってしまうと一言で済む。しかし、まず一人一人の言葉が重い上に、これらの人からコメントを引き出し、このように一冊にまとめた手腕がすごい。圧倒される本だった。ただインタビューをまとめた退屈な本ではなく、全ての人に全く違った物語と語り口がある。あまりにも悲しすぎる。
チェルノブイリの恐ろしさについて、全く分かっていなかった。しみじみとその悲劇がどれだけ凄まじいものだったのか伝わってくる。
Wonder
絶対泣くだろう、泣かせにくるだろうと思わせるシチュエーションと登場人物。顔に重度の障害をもって生まれてきた子供が初めて学校に入学し、成長する物語。
この世にある悪意、差別が突きつけられるけれど、決してそれだけでなく優しさや善意も溢れていることを教えてくれる。単なるいい話ではなく、正直さ、真摯さがあった。
新カラマーゾフの兄弟
あの亀山郁夫さんが書かれたのだから、カラマーゾフの兄弟の続編かな、と思ったけどそうではなかった。1995年という阪神大震災とオウムに激震が走った年の日本を舞台に変え、カラマーゾフの兄弟のオマージュとして登場人物もストーリーも重なりながら進んでいく。どこかカラマーゾフの兄弟というより、シンボル的に現れるアイテムだったり、登場人物の精神的な旅の様子が村上春樹のようだ。
最初はなんだかカラマーゾフの兄弟の同人誌みたいだ、と正直気恥ずかしく読んだ。だが読み進めるうちに、これはオマージュであり、リライトであり、ドストエフスキー論であり、カラマーゾフの兄弟の講義であり、亀山さんの自伝であり、アバンギャルドな実験小説だと気づかされる。下巻くらいからは物語に引き込まれた。
読んでいるうちに、カラマーゾフの兄弟自体への理解が深まった気がした。
今年はビジネス書だけでなく、小説をしっかり読もうとし始めていた期間だった気がする。あとは、子供の教育、子供の貧困問題を結構読み続けている。この問題について何かできないかなあと思っている。