言いたいことがなにもない

プライベートな日記です

面白かった本10冊まとめ(2014年7月~12月まで)

毎年「今年読んで面白かった本」を10冊選んでブログに書いている。

今年読んで面白かった本10冊 - はてなの広告営業 mtakanoの日記(2010年)

今年読んだ本のマイベスト10 - はてなの広告営業 mtakanoの日記(2011年)

今年読んで面白かった本10冊(2012年) - はてなの広告営業 mtakanoの日記

今年読んで面白かった本10冊(2013年) - 言いたいことがなにもない

 今年はいろいろあって本を読む機会が増え(というか趣味の時間を読書以外にあてづらかったので)、半年たったタイミングで1度10冊選んだ。


この半年の間に読んで面白かった本10冊(2014年6月まで) - 言いたいことがなにもない

 

今年の後半でも、良い本にたくさん出会うことができた。

悪について

心理学的に悪を成す人間にはどのような性質があるのかが語られた本。悪の定義という倫理学ではない。
フロムは、まず「人間は狼か羊か」という性善説性悪説の話を導入に、人間の有害な状態として、死を愛好すること(生命への根強い無関心)、悪性のナルチシズム、共生的・近親相姦的固着の三つをあげる。そしてこれらをもとに具体例としたヒトラーを挙げる。ヒトラー、そしてナチスが巻き起こした狂気は、現代でも変わらず起き得ていることだ。ナチスという病理を通して、人間を語る普遍的な本になったのではないだろうか。今も、おそらく未来にも通じるテキストだと思う。何回も読み返していきたい。


悪について - 言いたいことがなにもない

 

悪について

悪について

 

 

あなたに不利な証拠として

アメリカ探偵作家クラブ賞を受賞した作品。だがこの本はミステリというより、文学の領域にある。五人の女性警官の短編集。警官の業務や、それに携わる心理描写が徹底的にリアル。

犯人を射殺した警官がどんな心理状態で日々を送るのか、周りからどのような視線を投げかけられるのか。子供に暴力をふるってしまい、出ていかれてしまった母親警官の心情。夫の過ちを暴かなければならない警官。惨殺された被害者に同情を寄せた警官たちの顛末。そして最後に描かれる、旅の果てに待つスピリチュアルな話。
この最後の話が、救いとなり、心を震わせる。それまでの短編にあった無情さ、ハードコアさ、冷徹さが強烈で殺伐としていただけに、やっと心が洗われる。

あなたに不利な証拠として (ハヤカワ・ミステリ文庫)

あなたに不利な証拠として (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

 

愛するということ

気持ちの良い言葉が並ぶ愛の指南書のようなタイトルだが、そこはフロムが書いている、れっきとした心理学の本だった。売れすぎにも思うけど、今売れる理由も分かる。昔の僕が読んでいたら、また違った感想だっただろうか。
「悪について」とは対局を為しているようだった。悪は破滅的なネクロフィリアの傾向にあり、愛は生産的なバイオフィリアだ。その愛にはどのようなものがあるのか。愛することは技術であり、それを学ばねばならない。人は自分自身、親兄弟、恋人、家族、友人、そして人類を、生産的に愛さなければならない。この生産的にというのがポイントだ。
この本が書かれた当時の西洋社会へのメッセージも面白い(今の時代にも当てはまる)。人間の心の成長として考えると、キリスト教西洋社会がどれだけ未熟な段階にあるかという批判。対して東洋の宗教の方が高次元にあるという。残念ながらそれは思想の話であり、現実の日本も東洋社会も愛のある社会ではないのだけれど。
この本を読んだおかげで、愛という言葉を使うことが、今までよりも恥ずかしくなくなった気がする。まあ普段は決して言わないけど。

 

愛するということ

愛するということ

 

 

最高のリーダー、マネージャーがいつも考えているたったひとつのこと

タイトルがライフハックっぽいけど、とてもいい内容だった。
マネジャーとリーダーは混同されがちだが違っている。
マネジャーとは部下一人一人の個性に注目し、この個性を活用してもらえるようにすること。部下を成功させること。そのために役割や責任を作りかえる。
リーダーとは、みんなの欲求、不安に注目し、どこに向かっているのかを明確にする。強みは何か、行動すべきことを明らかにし、未来を描く。
そして個人の継続的な成功は、何をするかではなく何をしないかにある。

 

最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと

最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと

 

 

ジェフ・ベゾス 果てなき野望

ジェフ・ベゾスの話であり、アマゾンの歴史。ここまで赤裸々に公開することが許されたのは、社史を残そうとしたのか、ベゾスの秘密主義もこれくらいは逆に許容範囲なのか。
アマゾンがどれだけブラックなのかがわかる。でも大体成長している企業って、ブラックでさらにドタバタしているように思う。アマゾンは度を越しているようにも見えるけど。結果論とはいえ、ものすごく戦略的に歩んできたように見えるアマゾン。だからか、ベゾスの愛読書がブラックスワンで、講釈の誤りという言葉を使って筆者にたしなめているところが面白い。それがよりこの本はアマゾンの美化されていない、ありのままの姿であることを表しているかのようだ。
ワンクリックという本もベゾスの人間が見えるから、合わせて読むととても面白い。

 

ジェフ・ベゾス 果てなき野望

ジェフ・ベゾス 果てなき野望

 

 

うちのご飯の60年

三代の食卓を語ることで、社会情勢、政治、文化の変化を語る本。つまりミクロが雄弁にマクロを語る。言われてみればハッとすることではあるが、全てが新鮮な気づきでとても面白かった。筆者が自分と約10しか歳が変わらないこともあり、ここで書かれている祖母の時代の食卓、母の時代の食卓、私の時代、全てがありありと想像がついた。
祖母の時代は時代背景的になんとなく想像はつくが、母の時代、洋食が次々に食卓に登場した、主婦雑誌に溢れかえり、そしてファミレスが誕生していった背景は、このように政治も含めた文化全体で見直さなければ捉えづらいのかもしれない。

 

うちのご飯の60年―祖母・母・娘の食卓

うちのご飯の60年―祖母・母・娘の食卓

 

 

HHhH

最初は中々入り込めなかったけど、読み進めていくうちに、作者の熱に引き込まれていく。ナチで「第三帝国で最も危険な男」と恐れられたハイドリヒと、彼を暗殺しようとする二人の青年の話。そしてこれは作者自身の話である。さらに、歴史で語られることなく埋れてしまったナチと戦ったチェコの人々の物語であり、鎮魂の話だ。
ハイドリヒとパラシュート部隊の二人の青年の話を、膨大な資料を元に語りつつ、でも決して伝記のように語るのではない。舞台には常に作者がそこにおり、作者の心の動きとエピソードが入り込む。それによって、この物語はただの伝記ではなく、作者の物語になり、そしてその作者がリアルに感じる戸惑いと悲しみが、ナチへの怒りとチェコで起こった悲劇を読者にも生々しく実感させてくれる。こんな物語の手法があったとは。
そしてこの手法だからこそ小説の世界は広がり、わずかにしか登場しなかった人物も、そして語られなかった人物も、歴史の重みをもって実感させられる。

 

HHhH (プラハ、1942年)

HHhH (プラハ、1942年)

 

 

ZERO to ONE

何かをコピーしてレッドオーシャンに飛び込むのではなく、ゼロから1を生み出してブルーオーシャンの中で、未来を創っていく大事さについて。新しい何かを創造するにはどうすればいいのか。
マーケティング、お金の流れ、人材、営業、CEOの在り方など、一通りが分かりやすく書かれている。なによりそのようなビジネスのノウハウの本でもなく、かといって自己啓発でもない、まだ見ぬ未来に向けて読者を刺激してくれる本だった。

 

ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか

ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか

 

 

How Google Works

読んで思ったことはブログにも書いた。このようなWEB企業の効率的な働き方が当たり前の社会になればいい。みんなが幸せになれる働き方について、考えるキッカケを与えてくれた。


Googleが変えた働き方 〜How Google Works - 言いたいことがなにもない

 

How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス)  ―私たちの働き方とマネジメント

How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) ―私たちの働き方とマネジメント

 

 

子どもの貧困

母子家庭の貧困というニュースを目にする機会が増えてきたので、興味をもって手に取った。この本が書かれたのは2008年、どれだけ自分の目が開いていなかったのかがよくわかる。少子化対策がさらに取り沙汰されるようになったが、それ以前に子供の貧困は許容できないものであり、撲滅しなければならない。
この本は精緻に貧困の定義の測り方、日本と世界の比較から語る。そして日本の政策、母子家庭の経済状況、学歴社会における貧困の不利をデータで示す。さらに、子供の必需品とはなにかもデータで示すことで、より具体的な貧困の姿を目に見えるようにしてくれる。
この子供の必需品とは何か、で明らかになる世間の認識がまたすごいものだ。世間的に50%以上が必需品と考えるものが与えられていない状態を剥奪された状態として、貧困の具体的な姿を描くものとしてアプローチした結果、日本ではそもそも子供の必需品として考えるものが少なすぎるのだ。おもちゃも誕生日のお祝いもクリスマスプレゼントも、大学までの教育も、お古でない靴や文房具も、一年に一回遊園地や動物園に行くことも、与えられなくても仕方がないと認識されているのだ。なんて悲しい社会なんだろう。そんな子供の姿をしょうがないとして許容することはあり得ないと思う。


いつか子どもの貧困を無くすために戦いたい - 言いたいことがなにもない

 

子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)

子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)

 

 

子どもの貧困II――解決策を考える (岩波新書)

子どもの貧困II――解決策を考える (岩波新書)

 

 この半年の自分のテーマは「悪について」「働き方」「子どもの貧困」だったと思う。こうして振り返ってみるとよくわかる。来年はこれを推し進めていくことになりそうだ。

 

ちなみに今読んでいるこの本が最高に面白くてワクワクしてためになるんだけど、長いし難しいから全然読み終わらない。来年のリストでご紹介かなー。

人類が知っていることすべての短い歴史

人類が知っていることすべての短い歴史