何もしていない三連休
マイケル・ジャクソン THIS IS IT(特製ブックレット付き) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
- 発売日: 2010/01/27
- メディア: Blu-ray
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肩の力を緩めてもらえるように
『地域ではたらく「風の人」という新しい選択』を読んだ
藤代さんがゼミ生と一緒に本を作られた、とFacebookでシェアされていて、「風の人」というのはなんのことかわからなかったけど、藤代さんが関わられているのなら読んでみようかと軽い気持ちで手に取った。
というわけで、実は最初は本の内容を全く知らなかったのだが、読み始めるとこれがとても面白い。
藤代ゼミ生が島根の「風の人」たち8名にインタビューをしていく本だ。だが「風の人」とはなんだろう?「はじめに」を読んですぐに腑に落ちた。
彼、彼女たちは、地域に新しい視点をもたらす「風の人」ともいえる存在なのです。地方と都会をまたいで活動し、風を運び、風を起こし、去っていく。
「風土」という言葉もあるように、地域には「土の人」と「風の人」がいる、と言われます。土の人とは、その土地に根付いて、受け継いでゆく人のことです。土の人はもちろん地域を支える大切で欠かせない存在ですが、土の人ばかりでは、どうしても、新しい発想や視点が生まれにくい面があります。
一方、風の人は、一カ所に「定住」せず、わずかな期間で他の地域に移動することも少なくありません。異質なものや考えを運んでくることは、あつれきを生む原因にもなります。理解されずに、誤解されたり、無責任だと批判されたりすることも珍しくありません。
地方で働くといえば、Iターン、Uターンで定住するしかないと思っていた。そうするとどうしても地方が持つしがらみやコミュニティ、高齢化や仕事が見つかりづらいことが懸念だった。だが、これまで「風の人」という働き方、生き方は想像したこともなかった。
過疎化で廃校寸前の高校を再生するために、学力も人間力も身につけられるようなカリキュラムや、島留学などの仕組みを作ったりすることで全国から希望者が集まる高校に変えた元ソニーの方。
専門にこだわらず、総合医として離島医療に従事し、それでも無理せず趣味の時間も持てるよう「総合医の複数性」という仕組みを作って、ヨットやランボルギーニに乗ったりしてプライベートもちゃんと楽しんでいるお医者さん。
このような、風の人として、自由に楽しみながら地方のために仕事をする人達のインタビューが収録されている。
そして学生がインタビューしているからだろうか、堅苦しさがなく、等身大で親しみやすいその人たちのありのままの姿が見えた気がする。
それは例えば言葉遣いにも現れていて「100パーないです」「よく分かんねーって思って」「カッコイイじゃん」といった発言も多く、これが真面目に取材したメディアならキレイな言葉に置き換えられてしまうかもしれない。
でもこういった等身大の言葉が、「何も僕らとは違うスーパーマン、スーパーウーマンだからできたことではないんだ」と思わせてくれる。
もちろん、インタビューの中では、時として地方に受け入れられるまでの苦労もにじみでている。
僕も生まれ育った山梨でこの本の事例に出てくる方たちに出会ったら「うさんくさい余所者がきた、どうせすぐにどこかに行ってしまうくせに」なんて思ってしまうだろう。信頼を勝ち取るまで、たくさん乗り越えなければならないこともあったはず。相当な努力を積み重ねてこられたのではないか。
でも苦しいことは、東京で働いていたってあるのだ。自分が自由に働くためには東京で頑張るしかないんじゃないかと思っていたけど、それは非常に狭い視座だった。
少し前から「地方創生」という言葉をよく聞く。でも山梨に帰ってどんどんと広がっていくシャッター商店街を見るたびに、これを止める方法なんてないし、せいぜいインチキなコンサルタントが適当なお金の使い方をしてるだけだろ、という絶望的な気分になってた。でもそれも視野が狭かった。まだまだ地方は盛り上がっているし、もっと盛り上げていくのはこれからの行動次第だろう。
最近、自分の働き方を考える上で「貢献」がテーマになってきた。その観点でも「こんな生き方があるのか!」と気付かせてくれた。
新しい視点に出会えることは、本を読む楽しみの一つだ。この本は、希望を持って楽しく働いていくための生き方はたくさんあることに気づかせてくれた。
人の心は読めるか
人の心を魔法のように読むことができたら格好いいし、超能力者みたいだ。今よりもすごい自分になりたいと、心理学から読心術、コールドリーディング、微表情など、人の心を読み取るためのノウハウ本やセミナーは数多ある。
知とは先人の積み重ねによって拡大していくもののはずだ。しかし人の心を読む方法はこれだけ人気なのに、誤解や争いはなくならない。学校、家庭、会社、政治闘争、宗教、人種、ジェンダー、戦争。それなら心を読むのに長けた人が仕向けているか、そもそもお互いに理解しあえていないかのどっちかじゃないか。
僕が自覚している欠点の一つはせっかちなことだ。会話をしていると、つい口を挟んでしまう。今の仕事場には頭のいい人が大勢いる。早く言葉を発しないと置いていかれてしまうように思えてしまい、せっかちな傾向は強くなったようだ。しかし、それは誤解を重ねているだけだったりしないだろうか?
最近、「人の心は読めるか?」という本を読んだ。この本の結論は、この本の最後の章に数ページで書かれている。言ってしまえば「対話によってこそお互いの理解は促進される」、これが結論だ。そんなの当たり前じゃないかと思ってしまいそうだが、むしろ対話せずに人の心を読むということが幻想なのだ。
もちろん、他人の心を読もうとする第六感が備わっていることは人間が動物と違う点の一つだ。しかし、それは過信となることもある。この本の大半は、相手の心を推測することが、実際にはどれだけ推測したつもりにしかなっていないのかを、これでもかというくらいの論証で綴っていく。
アメリカ人はネイティブ・アメリカンに非人道的な扱いをした。動物のように殺し、住み慣れた土地を追い立てた。ナチスのユダヤ人への扱いも、スペインのインカ侵略も。我々日本人だって過去を振り返ればそうだ。
歴史を学べば、それらは過去の過ちであり、もしも自分がその時代にいたなら、それらは誤りだと指摘できたと思うだろう。でもそう簡単ではない。今だって、隣国を見下すニュースや書籍、SNSの投稿であふれている。そういう自分だって、残念ながら時にそんな気持ちになることはある。どうしても遠くにいる相手は概念のようで、心がないかのように、自分より頭が鈍いかのように、報道で知ったステレオタイプにとらえてしまう。その考えを元に行動を起こしたら、ネイティブ・アメリカンへの扱いと何が違うのか。
戦争において、遠くの敵よりも目の前の敵のほうが撃つのは難しいという。理論上は最初の一斉射撃で120人を殺傷できても、平均30メートルの距離での1分あたりの殺傷率は1人か2人かだという。人と人が物理的に近づくと、相手が同じ人間であることを認知して撃てなくなるからだ。
この本では、このような事例だけでなく、多くの実験も紹介されている。
学生に、この事例は倫理に反すると思うかと一問一答をする。中には「はい」が9割だったり、2割になる質問もある。しかし、同じ意見を持つクラスメイトはどれだけいるかと質問をすると、6割か7割はいるという回答になり、5割を切ることはなかった。このように、自分を基準に考えて、自分は多数派であると思ってしまうのだ。
カップルに、相手が望んでいる物を当ててもらう実験をした場合。推測で当てるケースと、相手と会話してから当てるケースでは、とうぜん会話したケースの方が当たる。それだけでは当たり前だが、自分の答えが当たっていると過信している割合は、推測で当てるケースの方が高いという。
このような実験を読むほど、人の心を読むだなんておこがましいと思ってくる。
人は洞察力を過信し、自分を基準にして物を見て、さらに周りの人間は馬鹿だと思ってしまいがちだ。脳は優秀なのであっという間に平均値を算出する。だがそれは物事をステレオタイプに捕らえてしまったり、異変に気づけなかったりするのにつながりやすい。
僕は仕事で、相手がどう反応するかを何通りか想定し、その上で「戦術的にこれが選択されるのではないか」という読みを行うことも多い。当たり外れあるが、これはとにかく読みを繰り返して、精度を上げるトレーニングをするしかない。ただ根本的には、相手と身体感覚を共有して、話し合うことに勝るものはないのだろう。
サマーソニック2015に行ってきた
夏の帰省
この半年読んで面白かった本10冊まとめ(2015年6月まで)
毎年「今年読んで面白かった本」を10冊選んでブログに書いている。去年からは半年に一回まとめるようになった。
今年読んで面白かった本10冊 - はてなの広告営業 mtakanoの日記(2010年)
今年読んだ本のマイベスト10 - はてなの広告営業 mtakanoの日記(2011年)
今年読んで面白かった本10冊(2012年) - はてなの広告営業 mtakanoの日記
今年読んで面白かった本10冊(2013年) - 言いたいことがなにもない
面白かった本10冊まとめ(2014年1月~6月まで) - 言いたいことがなにもない
面白かった本10冊まとめ(2014年7月~12月まで) - 言いたいことがなにもない
こうして見ると、もう60冊を選んできたことになる。読書ペースは多少落ちてきたものの、自分が読みたい本とその嗜好がぼんやり分かってきたので、より自分の血と肉になる本が読めている気がする。
ヒトラーランド
ドイツでどのようにナチスが拡大したのか、そこで過ごす人々の様子はどうだったのか。当時をドイツで過ごしていたアメリカ人達の記録を丹念に書くことで、今振り返るドイツではなく、その時々でどう受け止められていたのかが生々しく伝わってくる。
今の日本も、いつの間にか病が進行しているように思えていたから、身に迫る思いで読んだ。感想もブログにまとめていた。
君は永遠にそいつらより若い
大学生くらいの頃に出会いたかった本。主人公が変わり者の大学生だからか、一見するとフワッとしてのんびりしたユーモアのある青春小説。けれども読み進めていくと時折暴力、虐待、自殺、レイプなどの陰惨な世界が垣間見える。それでも皆生き生きとしていて、生命力に溢れたみずみずしい小説だ。
タイトルからしてパンクでかっこいい。フワフワしながらも、強い芯がある。著者も音楽好きらしく、登場人物がソニックユースのシャツを着ていたりしていた。タイトルが示すように、辛さもあるけど希望のある、とても心に残る小説だった。
極北
壮絶な小説だった。極北が舞台のディストピア。四部から構成されているが、その中で主人公の旅は目まぐるしく予想もしない方向に移り変わっていく。
寒々しい極北を舞台に、孤独な主人公が旅をしていく物語。旅が進むにつれて、わずかな生き残りの人々と、廃棄された文明に出会うのだ。文明はなぜ廃棄されたのか。今この本は、311の前にこの物語は書かれていた、と紹介されており、それはネタバレといえばネタバレなのだが、その程度ではこの本の壮絶さが薄れることはない。むしろその文句で興味を持って持つ人が増えて欲しいとさえ思える。
人類の傲慢さへの警鐘であり、残酷さであり、希望の話。311の後により一層意味を持った小説。
- 作者: マーセル・セロー,村上春樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2012/04/07
- メディア: ハードカバー
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ピース
Twitter文学賞をとった小説。一言で言えば一人の老人の回想の話なのだが、とても不思議な小説で、本の迷宮、神話の中に取り込まれた感覚になる。実は古い小説だと言うのが驚くくらいに斬新で実験的。時制、主人公、さらには舞台がリアルからファンタジーへとコロコロ変わっていく。それは人の思考は一貫していないことを表現しているのだろうか。ふと昔読んだ物語が挿入されるが最後まで完結せずに本文に戻る。ただ後になって比喩であったことがわかる、そのような展開が最初から最後まで続いていく。全くつかみどころがなく、それがゆえにスケールが大きい。
自由からの逃走
ナチズムの病理を解くという背景で書かれた本。フロムの本は昨年から読み始めているが、全てが一貫している。読んでいると、ヒトラーランドと同じく今の日本の危険な状況が身に迫る。
中世封建社会から、人は制限された自由の中にいた。それから人は自由を求めてきたのだが、その結果、いざ自由な状態になるとそれは他者との結びつきや保護のない、集団から切り離されて一人でいきていくしかない孤独なことでもあった。
特にそれに不安を感じるのは中産階級や貧困層などで、 これが自由から逃走し新たに集団に帰属し依存する、つまりファシズムへと走ってしまったのだと解き明かす。そしてそれはまた権威に隷属しがちである。
人は自由を享受するためには、自発的に自己も含めて他者も愛すること、そして生産的な仕事の中で他者と繋がらなければならないのだ。
自由やファシズムに負けないよう、そして自分がより良く生きていくための指針になるような本だ。フロムの本はこれから何度も読み返していきたい。
おどろきの中国
中国はすぐ隣にあり、歴史的にも深いつながりがあるのに、実の姿をほとんど知らないし、謎に思う側面が多い。でもこの本を読んで、おぼろげながらも全体が見えた気になった。
そもそも中国とは国家なのか。二千年以上前に統一され、トップが変わってもあれだけ広い土地と国民が、漢字の表記は一緒でも発音は様々というのに、長く国家という認識をもっているのは外からは不思議なことに見える。だがこれが中国の人々には不思議ではないことを理解しないと、中国がわからない。政治的統一を第一に考えること、中華思想や幇、儒教の考え方を知らなければいけない。
そうして少しずつ歴史と考え方を紐解くと、なぜ歴史問題でこれだけすれ違いが生じてきたのかが薄っすらと見えてくる。
中国と日本との間にあった文脈、日本が伝統的にどう見られていたのか、日本が大東亜戦争と言いながら矛盾した態度をとっていたことがどう見られていたのか、暗黙の了解的なものにより、本来戦争や靖国神社、尖閣諸島をどうすり合わせしていたのかが分断されてしまい、現在のようになってしまったのではないか。
色々な困難も感じるが、中国の人びとの考え方などへのスケールの大きさも感動する。とても面白い国で尊敬の念を抱く。こんなに合理的な選択をする人たちには日本はそうそう勝てない。共産党一党独裁は続くのか、という程度の話では、きっと彼の国への理解が及ばなくなるだろう。
残念ながら日本は中国を嫌うムードになってしまっているが、それよりもまずは中国をもっと知ることが必要ではないかと思った。
HARD THINGS
著者であるベンホロウィッツが、自伝的にこれまでの経営の中でぶつかった困難をものすごく具体的に語る。
経営指南書、経営学の本はあれど、このように具体的に事例ベースで書かれた本は他にあるのだろうか。経営者、独立したい方にとってはとても勉強になり、困難にぶつかった時に度々見返すのではないだろうか。僕は独立したい気持ちはないが、それでも経営側の気持ちが多少なりとも分かる、とてもためになる本だった。とはいてベンチャー企業のマネージャークラスでも、人材採用やマネジメントの話が書かれているので、具体的にためになる話は結構多い。
HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか
- 作者: ベンホロウィッツ
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2015/04/17
- メディア: Kindle版
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鹿の王
読む前から絶対に面白いことが分かっていて、案の定読み始めると止まらなくなった。
著者が文化人類学にも詳しいため、単なるファンタジーではなく、宗教による対立、民族による対立が描かれていたり、それぞれの民族ごとで描かれている文化も、裏側に細かな設定があるのでは、と思わせる緻密さがある。さらに人の描写も非常に上手いので、ファンタジーだけどリアリティがある。
複雑な問題を扱いながらも、人々がそれぞれの信じるもののために必死で戦い、生きていく姿から、素直に楽しめるはず。
データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則
今ウェアラブルがブームになっている。それで何が実現されるのかはいまいちよく分かっていない。この本を読むと、ウェアラブルがもたらしうる未来が少し見えてくる。著者は今のようにウェアラブルがブームになる前から開発とテストに携わっており、なんとすでに数年間身をもってあらゆるデータを計測し、実験してきたという。紹介されるエピソードがまたワクワクする。ハピネスを測ったり、効率的な職場にする要因を調査したり、店舗の売り上げを上げる方法を経営コンサルとコンピューターでそれぞれ実践させ対決させたり。だいたいにおいて、人間の直感や論理とは違った結果が見出されることにひたすら驚く。
データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則
- 作者: 矢野和男
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2014/09/24
- メディア: Kindle版
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コンテンツの秘密―ぼくがジブリで考えたこと
コンテンツという言葉はよく聞くが、ではそもそもコンテンツとは何なのか。良いコンテンツとは何か、ヒットするコンテンツの要因は何か、天才とは何なのか。これらがわかりやすく整理されていてとても面白い。
コンテンツを芸術作品ととらえると、この本に対して一部の人は反発するだろうし、この本で語られる文脈とは違った奇妙な大ヒット作が生まれることもある。
それでもここで書かれている、コンテンツとは現実の模倣であり、人の脳が見ている世界をいかに描くかであるという視点は面白い。自分に子供が生まれて一層実感するものがある。
だから、たくさんの表現パターンが出尽くして、なおかつこれまで誰も見たこともない、そして自分の脳の中にある姿を描こうとするクリエイターは天才であり孤独なんだな、と思った。
コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと (NHK出版新書)
- 作者: 川上量生
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2015/04/11
- メディア: Kindle版
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この半年間は、おもしろい小説にもたくさん出会うことができてよかった。また次の半年も面白い本にたくさん出会えるだろう。