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言いたいことがなにもない

プライベートな日記です

アメリカ人が見た、ナチスが台頭していくドイツの姿 『ヒトラーランド』

ナチスが行った行為は、人類の汚点として考えられている。なぜそんなことが起きてしまったのか。ヒトラーは狂人なのか。狂人だとするなら、支持した人々は何者なのか。

フロムは「悪について」で、ナチスを集団のナルシズムという病理にかかったもので、血族、国家、宗教、人種がその熱情の対象になってしまったと喝破した。

悪について

悪について

 

 実際、ふとしたことで簡単に狂気は伝染するのだろう。このまとめはリアリティがある。


今、改めて天皇機関説事件をおおざっぱに振り返ってみた~@noiehoieさんつぶやき編集 - Togetterまとめ

数年前、このまま戦争が起きるのではとドキドキしていた。今よりもさらに中国への反感が高まっていて、身の回りの友達でさえ、中国の悪口をまとめたブログをシェアして怒っていた。

それからまた今、書店は反韓国や反中国の本で溢れ、ヘイトスピーチの団体が登場し、ちょっとしたことで過敏にネトウヨが謝罪を要求する社会になってきた。こんな様子を見ていると、僕らが平和だと思っている社会は、ちょっとしたことで崩れてしまうのかもしれない。だからフロムの説には納得がいく。

 

一方で、全ての人がナチスを支持したとは思えない。当時を生きていた人たちの様子を、マクロではなくリアルに知りたいと思っていた。そうしたタイミングで、ふとこの本が目に止まった。ヒトラーランドという本だ。

ヒトラーランド――ナチの台頭を目撃した人々

ヒトラーランド――ナチの台頭を目撃した人々

 

 

ナチスは急に誕生したわけではないし、ヒトラーも急に台頭したわけではない。徐々にその勢力は拡大していったはずなのに、なぜ誰もあの狂気を止められなかったのか。後から知ったかぶった顔で振り返ることは誰にもできる。それならなぜあんなにも明らかな悪を、その時代の当事者は気づけなかったのか。

この本は、ヒトラーの誕生から世界大戦に至るまでを、当時のドイツで目撃していたアメリカ人のインタビューによる証言や手紙、その他未公開の資料を中心にしている。そうすることで、今の時代だからこその分析をせずに、生々しくその時々の空気感を伝えようとしてくれる。

まずなぜヒトラーナチスが誕生したのか。極右が誕生するには理由があって、第一次世界大戦に敗北して大きな負債を抱え、困窮するドイツの姿が描写される。

これは今の日本でも同じだと思う。当時のドイツほど困窮しているわけではないけれど、持たざる人が、特権を得ている(ようにみえる)在日の人々にヘイトスピーチをしている様子と被るものがある。

また、当然ヒトラーも最初は無名だった。会う人すべてが彼に何かを見出したわけではない。「彼は凡人である」という感想もたくさん持たれていた。しかし、いつの間にかナチスは拡大していった。けれども楽観主義の人々は気づかないふりをしていた。ポーランドもそうしているうちに、侵攻されてしまった。ユダヤ人の迫害は少しずつ始まっていった。ナチスは戦争を仕掛けてこない、国内で反抗勢力が立ち上がる、そう考えられているうちに世界は戦争に巻き込まれた。ドイツにいるジャーナリストやアメリカの大使がその危険性を発信しても、誰もがいずれなんとかなる、だから気にしないでいいと考えていた。

変わってしまったドイツが一目でわかったのかというとそうでもない。意外なことに、当時のドイツは入国が規制されていなかったので、たくさんの旅行者がいた。だが、その異常性には気づかなかった。たった一週間くらいの旅行では、ユダヤ人にふるわれていた暴力には出会わないのだ。

ドイツ国内ではどんな変化があったのか。メディア統制によるドイツが外国から攻撃を受けているという報道を信じてナチスを支持した人たちもいた。なんの前触れもなく、反ユダヤに転じる人々、ナチスの腕章をつける人々もいた。

改めてわかったことだが、やはり当時の人々が、全てナチスに賛同したわけではないのだ。戦時中は配給になり、満足な食事をとれているものはナチス関係者くらいだったようだ。ゲッペルスデンマークノルウェーに侵攻する旨をラジオで流した時、目に涙を溜めて「あのクソッタレの大ほら吹きが!」と叫んだ女性もいる。ドイツの家庭の約半数は家族を失い、悲しみに包まれていた。

でも、自分がその当時のドイツにいたら、ナチスに反対する声はあげられなかっただろう。歯向かうことは恐ろしいことだし、そもそも気づいた時には手遅れだっただろう。

今の日本は教訓を活かせているのか。こんなにヘイトがあふれていて、いつの間にか手遅れになる可能性もある。社会の空気が恐ろしい方向にいき、取り返しがつかなくなる前に、理性をもってそれを止めなければならない。

これはナチスだけが悪という話ではなく、人類が行った愚行であり、それを忘れてはいけないのだ。

 

ヒトラーランド――ナチの台頭を目撃した人々

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