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プライベートな日記です

ライブで演奏者側が音量が大きくする理由の私見

このエントリを読んだ知り合いが「なんで耳栓が必要になるくらい大きな音量でライブをやるのか。クラシックならアンプも使っていないし、必要ないではないか」と言った。

sauce3.hatenablog.com

ライブの音量が大きくなる理由はいくつか考えられ、勝手に分類してしまうと、演奏者のエゴ、表現、スタイル、エンターテイメント性、思想があるのではないかと思う。

演奏者の話なのでPAが下手、会場のハコの響きや設備がダメ、というのは除く。

演奏者のエゴ

演奏初心者がバンドを組んでスタジオに入ると、大体他のメンバーの音を聞かずに自分の音だけを聞いて興奮しているので、自然と自分のパートの音量を上げてしまう。
他のメンバーの音量がさらに大きいと、負けじとより自分の音量も上げていき、結果的に全員爆音で何を演奏しているのか分からなくなる。
バンドとして経験を積んだり、上級者が入ってくると、ボーカルやドラムの音量を基準にしたり、全体の音像を考えて配置していくので問題はクリアになる。
ただこれは初心者のケースとはいったものの、やっぱり自分のパートの音量を大きくしたい、目立ちたい、とはどうしても思ってしまうものだ。

ジャンル(スタイル)

例えばヘビーメタルの流れを組む一時期のビジュアル系なんかだと、ドンシャリ系という中域を大幅にカットし、低音と高音の帯域を極端にあげる、というサウンドが主流だった。このサウンド自体、迫力を求めているがゆえに音量が小さいと非常に間抜けに聞こえてしまう。
 
ドンシャリ系は別としても、パンクやヘビメタのようなアナーキーな風貌のバンドが小さい音量で演奏していたら、相当に間抜けっぽい。
一方でスタンダードジャズが爆音ということはない。爆音のジャズはジャンルが変わる。そう考えるとまず音楽のジャンルがあり、さらにはそれをどういうスタイルで演奏するかでも決まってくる。
 
そういえばThe Whoは音が大きすぎて最前列の観客の鼓膜を破ったというロック伝説がある、とタモリ倶楽部で言っていた。だがその後同じ出典を見かけたことがないため、都市伝説かもしれない。でもピートタウンゼントが腕をブンブン振り回しながら、ギターの音が小さくてペケペケしていたらコメディっぽい。だからある種のロックバンドなんかは、やはり音量の大きさは切り離せないと思う。

エンターテイメント性

音楽フェスがより一般に浸透していった影響か、ベースの音量を大きくしてノリやすい、踊りやすい四つ打ちサウンドを構築するバンドもしばらく前は多かった。
こうすると、大きめにするとは言えブーストした低音をもとに全体のバランスを作りたくなるため、結果的に全体が大きくなってしまうことがある。
ただテクノのイベントなんかだと分かりやすいけど、低音が大きいだけなら耳への負担は幾分マシなはず(真偽は不確かなので、自己責任で)。耳を傷つけるのは高音域が原因で、ドラマーなんかだとハイハットシンバルがある左側の耳の方が難聴になってしまうケースがある。

表現方法

楽譜でもクレッシェンド、デクレッシェンドがあるように、演奏の中で静かなパートと音量が大きいパートを使い分けることで、それぞれの表現を際立たせることができる。それを追求した結果、一曲のなかに耳をすます程の静寂と聴くものを圧倒する爆音をもうけることで一つの表現にしているバンドもある。
このようなバンドが静かなパートを演奏するとき、観客も耳を澄まして聞く必要があるくらい極端なこともあり、ものすごい緊張感が漂っている。爆音は勢いで成立することもあるが、静かな音はその人の演奏力や表現力が露わになるので誤魔化せない。またそれは爆音のパートがあってより凄さは際立つ。改めてだが、そうすると先ほどスタイルという項目で語った迫力という観点とは別に、曲の構成として大きな音量のパートが必要になる。
ただこのようなバンドを音像にも相当こだわっており、爆音というか轟音にすることで、音は大きいが耳はそこまで痛くならない、音を浴びる、音に包まれているような体験をさせてくれることが多い。
 
あとは、ギターの音の作り方、出したい音によっては、ある程度以上の音量にしないとベストな響きにならないことがある。
極端な例だと、ノイズギターを出すとき、これも心地よいノイズと不快なノイズ、どちらも表現としてあるのだけど、ある程度の音量と圧力がないと説得力がない。

思想

マイブラくらいのバンドになると、なぜ爆音を出すかというとそれは表現を超えて思想、もしくは人生だ。
再結成の来日公演に行ったら耳栓が配布され「こんなものを使うのは軟弱で邪道だぜー」とか思っていたが、最後にyou made me realizeを超爆音で30分やっていた時、流石に途中で耳というか脳みそが痛くなって耳栓をした。耳栓をしても爆音だった。

最後に

僕は特に聴いているアーティストではなかったが、アンドリューW.K.が「始めてクラシックを聴いた時に、こんなにたくさんの楽器を使って一斉に音を出してまで伝えたいことがあるのかと思った」とインタビューで答えていて、納得感があった。
 
世の中、声だけがデカいつまらない人間が幅を利かせていることは往々にしてある。それなら本質的にマイノリティーであるロックバンドなんかは、せめて音楽くらい大きな音を出すしかないだろう、と僕は思う。
 
なんて格好良いことを言ってみたが、元のエントリはアイドルのライブについてじゃないか。 俺もおっさんだからそろそろ耳栓するかな。
Loveless: Expanded Remastered Edition

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