「皺」 パコ・ロカが書いた、老人が主人公の美しいスペインコミックス
ふとしたきっかけで、「皺」というスペインコミックスを読んだ。これがとても面白かった。
アルツハイマー病の兆候がみられ始めた老人が主人公。介護に疲れた息子が、主人公を老人ホームに入れるところから始まる。そのため登場人物もほぼ老人だ。同じ言葉ばかり繰り返している元ラジオのアナウンサー、息子に連絡するために一日中電話を探してさまよう老婆、アルツハイマー病の夫をただ笑顔で看病し続ける妻、そのような人々からこっそり金をせしめる身寄りのない老人…。そしてその老人ホームの二階は、アルツハイマーが重度に進行した人が行く場所で、主人公はそこに連れて行かれることを恐れている。
登場人物は、何も変わらない日々を寝てばかりで過ごす。誰もが個性的だけれど、誰もが不要な存在。記憶は失われていき、次第に人は二階へと消えていく。それでもこの物語では、微かに愛情と友情と冒険が語られる。そして、とても穏やかに消えていく。
記憶が失われていく人生の終わり、その悲しさが身に迫る。今まで、老人ホームを舞台にした物語は読んだことがなかった。
もう一編、スペインの内戦を扱った「灯台」という作品も収められている。これも素晴らしかった。このパコ・ロカという作者の作品をもっと読みたいと思った。邦訳してくれないかな。
- 作者: パコ・ロカ,小野耕世,高木菜々
- 出版社/メーカー: 小学館集英社プロダクション
- 発売日: 2011/07/29
- メディア: 単行本
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