群馬の実家で
週に一日は妻の実家がある群馬へ娘に会いに行く。まだ産まれて一ヶ月にも満たない娘は、フギャアと泣いている他は、時折ムグウと音を発しながら手足をバタバタさせている。起きている時は大抵ひょうきんな顔をしている。このひょうきんな顔が僕にそっくりなので、大人になったら「お前のせいでお前にそっくりになった」と殴られるんじゃないかと危惧していた。が、最近少しずつ女の子っぽくなってきたように見えるので安心している。
新生児は手間がかかる。少なくとも三時間に一回はオムツを替えて、母乳を与えている。この作業にも一時間くらいがかかる。母親はなかなか眠れないし、自分の自由な時間もなくて大変だ。敬服する。一方で僕はまだビクビクしながら紙オムツを替えている程度だ。
群馬の実家にはお世話になっているので、最近は毎回フランスパンを買って帰っている。義母と義妹は、フランスパンが好きだという。バケットを入れた長い袋をぶら下げて湘南新宿ラインに乗る。娘が眠ったその隙に、みんなでかじったりしている。
娘が産まれたら、心根も落ち着いて日和ってしまうんじゃないかと心配していたけど、そんなことはなかった。いまだに通勤電車の中で、レイジアゲインストザマシーンとかエレカシの「奴隷天国」とか聞いていたりしていて、それはそれでどうかと思うけれど。なぜだかいつでも虚しかったりした気持ちは、三十半ばを前に、なくなった。でもずっとその気持ちがあったことを、あー若気の至りだねなんて、他人事みたいにケロリと忘れてしまうほど鈍感でもなかった。
居間で寝転びながら、娘がムキュウとか発しているのを聞いていて、そんなことを考えていた。