何を見ても何かを思い出す
関東に記録的な大雪が降った日は一切外に出ずに自宅で本を読んだり映画を観たりして過ごした。うち一本は「横道世之介」という映画。世之介の大学一年生の時間と、それから15年くらいが経ち、かつての彼の親友や恋人がふと世之介のことを思い出す、という二つのタイムラインで物語は進む。
あれだけ毎日のように会っていた人達と、今は疎遠になってしまったというところにとてもリアリティを感じる。
僕は大学卒業のタイミングで、友人たちとの連絡を意図的に絶ってしまった。それには当時の僕なりの色々な切実な理由があり、そしてその後いくらかの心残りになった。でも約10年をかけて、何人かとはまた交流を復活させることができた。
そんな大学生時代を思い出してしばらくセンチメンタルになった。
翌日は、駒沢大学駅の方にある焼肉屋に行った。奥さんが出産間近で明日から実家に帰るので、最後に二人で美味しいご飯を食べることにしたのだ。
駒沢公園を散歩するともう梅の花が咲いていた。
大雪が降って、ああ東京にも真冬が来たなと思った翌日に、実は春が近づいてきていたことを実感するのは不思議な気分だ。
まだ雪が残る駒沢公園は、ランニングをする人や、大学生、子連れの親子でいっぱいだった。その中を、もうすぐ子供が産まれる奥さんと歩いていて、とても安らかで落ち着いた気分になった。
その時にもう一度、大学生時代の友人を思い出した。例えば昨年くらいに約10年ぶりに会った友人たちは、子供がいたり、これから海外に旅立つ決心をした奴もいる。そういえば数年前にも研究のために海外へ旅立ってしまった奴がいた。あんなに毎日のように会っていた彼らと僕はすでに違う道を歩いていて、それなのにどこかで繋がっている気もする。