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言いたいことがなにもない

プライベートな日記です

教育における非認知的スキル

娘がどうしたら幸せに育つのか、いうのはもちろんのこと、子どもの貧困問題もずっと気になっていることもあって、しばらく幼児教育関連の本を読んでいた。

幼児教育、子どもの教育にはトレンドがあるようで、本によって真逆のことを言っていることもある。学術的に真逆な結論が出ているだけでなく、教育という分野はあらゆる人が専門家風になるから「おっほん私の考えではねえ〜」という偉い人の感覚や自らの経験が大きな声になってしまったりもする。こればかりは徹底的に科学的な論考と統計にもとづいて、何が正しいのかを見極めていくしかないようだ。ちなみに「学力の経済学」には、日本の教育は統計的な結果よりも、偉くて声のでかい人のご意見が反映されるという状況が書かれていて暗い気分になる。

 

「学力」の経済学

「学力」の経済学

 

認知的スキルと非認知的スキル

その「学力の経済学」にも書かれているが、最近はこれまでの教育で重視されてきた認知的スキルより、もっと非認知的スキルに着目すべきという話になっている。

認知的スキル、非認知的スキルとはなにか。

認知的スキルはIQや学力的検査によってはかられるものだ。対して非認知的スキルとは、肉体的・精神的健康や、忍耐力、やる気、自信、協調性といった社会的・情動的性質であるという。つまりは、EQや人間力、生き抜く力のようなものだ。


主にジェームズ・ヘックマンという教授が提言しているのだが、幼少期に非認知的スキルを伸ばすことは自制心ややり抜く力を伸ばすことにつながるという。それが学力に影響するのはもちろんのこと、大人になった時の年収の高さ、さらには逮捕率や飲酒率にさえ影響を与える結果が出ているという。偏差値を上げようとして、非認知的スキルを伸ばすような友達との時間や部活動の時間などを奪ってしまうと本末転倒だよ、ということだ。


そして学力を上げるだけでなく問題を抱えるリスクが減る。これは過去のアメリカで、犯罪率と貧困率の高い地域の幼児にしっかりと教育を行ったいくつかのプロジェクトが行われたのだが、その後プログラム受講者の人生を追ってみた結果分かったらしい。詳細はヘックマン教授の本にも詳しいが、端的にはこのリンク先にも書かれている。

「幼児教育」が人生を変える、これだけの証拠 | 子育て | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

貧困は次の世代にも引き継がれてしまうというのが一般的な定説だが、幼児教育をしっかりと受けた子どもたちのその後を追うと、同地域の子供達よりも年収を上げ、逮捕率も低かったというのだ。 


そうすると、先ほど書いたように、非認知的スキルは生き抜く力と言い換えてもいいだろう。


生き抜く力の重要性

生き抜く力が育っていないとどうなるのだろうか。幼児期の強いストレスが大人になってもトラウマを残すというのはもはや当たり前と認識されている。アニメやドラマでもそんな登場人物はたくさん出てくる。

実際に子供時代の逆境を数値化したもの(ACE)とアルコール依存症や自殺率などには相関性があるそうだ。それどころか、過度な飲酒や過食、喫煙という行動をとっていないとしても、成人後の健康に悪影響をおよぼすという結果も出ているそうだ。人間のストレス対応システムは酷使すればやがて壊れてしまうのだ。

しかしこれは回復不能というわけではなく、アタッチメント、つまり愛情によって回復すると言われている。

ちなみにこの本では、これらの調査とその歴史がまとまっている他、過去の逆境と戦って回復しようと必死で努力する子どもたちの事例も紹介されている。

成功する子 失敗する子 ― 何が「その後の人生」を決めるのか

成功する子 失敗する子 ― 何が「その後の人生」を決めるのか

 

 

一方でヘックマン教授の調査には批判もある。例えばヘックマン教授の提言は、ペリー就学前プロジェクトとアベセダリアンプロジェクトという2つのプロジェクトに由来するが、サンプル数としての子どもの数は合計約100人と、あまり多くはない。

それならばと同様の実験を大規模なサンプル数で展開してみたものの成果が見られなかったケースもあるのだが、これらの否定的な成果は提言に加味されていないというのだ。

幼児教育の経済学

幼児教育の経済学


この本では、前半でこのようなヘックマン教授への批判も含めた様々な幼児教育専門家のコメントを紹介し、後半でヘックマン教授がそれらに回答する、という構成をとっている。そのような透明性には信頼がおける。 


もちろん子どもの教育において、そもそも非認知的スキルが重要であるということはほぼ自明であって、それ自身が批判がされているわけではない。

 

教育とビジネススキル 

教育に何が重要なのかは時代にあわせて変化しているかのようだ。大きくはビジネススキルに求められるものの変化が教育に影響を与えているように見える。


大量生産・大量消費の行動成長期に求められていたスキルとは、たくさんの物事を効率的に処理することであったり、特定の分野への高い専門性だった。それは学力検査で高い点数を出すことで適性を判断できただろう。

しかし現代では処理ベースの仕事はコンピューターに任せればよく、むしろ個々の才覚に応じて様々な状況に対応することが求められつつある。突き抜けた専門家でないのなら、むしろジェネラリスト的気質のほうがニーズが高いように思う。だから非認知的スキルが求められているのではないだろうか。


そうして未来の働き方を考えていくと、エンジニアリングスキルが重要になるに伴って、科学的アプローチができる教育こそ必要である、となっているかもしれない。 



そんな風に様々な意見があるので、最終的に何を信じるかに近そうだ。大人が信じたことで、将来の娘に後悔はさせたくないけれども。

でもとにかく幸せな幼年時代を過ごせるように、どうやったら今日は笑ってくれるかとかは考えている。


  

子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)

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