言いたいことがなにもない

プライベートな日記です

『地域ではたらく「風の人」という新しい選択』を読んだ

藤代さんがゼミ生と一緒に本を作られた、とFacebookでシェアされていて、「風の人」というのはなんのことかわからなかったけど、藤代さんが関わられているのなら読んでみようかと軽い気持ちで手に取った。

というわけで、実は最初は本の内容を全く知らなかったのだが、読み始めるとこれがとても面白い。

代ゼミ生が島根の「風の人」たち8名にインタビューをしていく本だ。だが「風の人」とはなんだろう?「はじめに」を読んですぐに腑に落ちた。


彼、彼女たちは、地域に新しい視点をもたらす「風の人」ともいえる存在なのです。地方と都会をまたいで活動し、風を運び、風を起こし、去っていく。
「風土」という言葉もあるように、地域には「土の人」と「風の人」がいる、と言われます。土の人とは、その土地に根付いて、受け継いでゆく人のことです。土の人はもちろん地域を支える大切で欠かせない存在ですが、土の人ばかりでは、どうしても、新しい発想や視点が生まれにくい面があります。
一方、風の人は、一カ所に「定住」せず、わずかな期間で他の地域に移動することも少なくありません。異質なものや考えを運んでくることは、あつれきを生む原因にもなります。理解されずに、誤解されたり、無責任だと批判されたりすることも珍しくありません。

地方で働くといえば、Iターン、Uターンで定住するしかないと思っていた。そうするとどうしても地方が持つしがらみやコミュニティ、高齢化や仕事が見つかりづらいことが懸念だった。だが、これまで「風の人」という働き方、生き方は想像したこともなかった。

過疎化で廃校寸前の高校を再生するために、学力も人間力も身につけられるようなカリキュラムや、島留学などの仕組みを作ったりすることで全国から希望者が集まる高校に変えた元ソニーの方。
専門にこだわらず、総合医として離島医療に従事し、それでも無理せず趣味の時間も持てるよう「総合医の複数性」という仕組みを作って、ヨットやランボルギーニに乗ったりしてプライベートもちゃんと楽しんでいるお医者さん。

このような、風の人として、自由に楽しみながら地方のために仕事をする人達のインタビューが収録されている。
そして学生がインタビューしているからだろうか、堅苦しさがなく、等身大で親しみやすいその人たちのありのままの姿が見えた気がする。


それは例えば言葉遣いにも現れていて「100パーないです」「よく分かんねーって思って」「カッコイイじゃん」といった発言も多く、これが真面目に取材したメディアならキレイな言葉に置き換えられてしまうかもしれない。
でもこういった等身大の言葉が、「何も僕らとは違うスーパーマン、スーパーウーマンだからできたことではないんだ」と思わせてくれる。

もちろん、インタビューの中では、時として地方に受け入れられるまでの苦労もにじみでている。
僕も生まれ育った山梨でこの本の事例に出てくる方たちに出会ったら「うさんくさい余所者がきた、どうせすぐにどこかに行ってしまうくせに」なんて思ってしまうだろう。信頼を勝ち取るまで、たくさん乗り越えなければならないこともあったはず。相当な努力を積み重ねてこられたのではないか。

でも苦しいことは、東京で働いていたってあるのだ。自分が自由に働くためには東京で頑張るしかないんじゃないかと思っていたけど、それは非常に狭い視座だった。

少し前から「地方創生」という言葉をよく聞く。でも山梨に帰ってどんどんと広がっていくシャッター商店街を見るたびに、これを止める方法なんてないし、せいぜいインチキなコンサルタントが適当なお金の使い方をしてるだけだろ、という絶望的な気分になってた。でもそれも視野が狭かった。まだまだ地方は盛り上がっているし、もっと盛り上げていくのはこれからの行動次第だろう。

最近、自分の働き方を考える上で「貢献」がテーマになってきた。その観点でも「こんな生き方があるのか!」と気付かせてくれた。

新しい視点に出会えることは、本を読む楽しみの一つだ。この本は、希望を持って楽しく働いていくための生き方はたくさんあることに気づかせてくれた。

 

地域ではたらく「風の人」という新しい選択

地域ではたらく「風の人」という新しい選択

  • 作者: 田中 輝美,藤代 裕之,法政大学藤代裕之研究室
  • 出版社/メーカー: ハーベスト出版
  • 発売日: 2015/08/18
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