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言いたいことがなにもない

プライベートな日記です

パンクロックを感じた文学5作品を選んでみる

大学生くらいまではあまり本を読まなかった。せいぜい子供の頃に赤川次郎、中学生に宗田理、高校生で村上春樹、大学生で新本格のミステリを読んでいたくらい。大体一人の作家か特定のジャンルのみを読んでいた。

 
純文学というジャンルには、大先生だとか呼ばれているようなTHE文豪が偉そうにふんぞり返っているイメージを持っていて、「あんなの権威の上に胡座をかいて、古臭いカビの生えた本を書いている奴らだ」くらいに思っていた。
 
だがある時、友達に「俺もそう思っていたんだけど、読んでみたら結構世の中に反抗したり、悩みや苦しみが出ていて面白いよ」と言われたことがあった。
 
それがきっかけだった。読み始めてみたところ、とても面白い。むしろ、文豪とか文壇とか、権威に対して徒手空拳で立ち向かうような作品もたくさんある。太宰治三島由紀夫や、芥川龍之介夏目漱石など、有名作家から手にとって、少しずつ色々な作家の本を読むようになった。
 
次第に、大抵の文学のスタンスってパンクなんだなあと思うようになった。中でも明確にパンクロックっぽさを感じた小説がいくつかあるので、それを5つ選んでみた。
 

くそったれ!少年時代

 

くそったれ!少年時代 (河出文庫)

くそったれ!少年時代 (河出文庫)

 

 

ブコウスキーは、短編と詩を多く残した。これは、6作品ある長編の一つ。ちなみに、うち5作品は自伝に近い内容となっており、これは少年時代からの話で、第一章的な存在。両親は不仲だし、顔には醜い痘痕ができて女の子はもちろん、誰にも好かれなかった、くそったれな少年時代の話。
面白いのは、ブコウスキーはクラシックが大好きでむしろロックは嫌いだった。U2のスタジアムライブ(名言されていないが)に招待され、ボーカルのボノに「今日はブコウスキーが来ているぜ!」とせっかく紹介されたというのに、後のエッセイでは「彼も昔は反体制側の人間だったのだろうが、今は体制側である」などと書いていたのには笑った。
 
あと、ブコウスキーには「魂の箍が外れ過ぎてしまって、獣と暮らしても何とも思わなくなった男の告白」という、内容は適当に書かれたものだけれど、タイトルだけは素晴らしくパンクな短編がある。
 

ジョニーは戦場へ行った

 

ジョニーは戦場へ行った (角川文庫)

ジョニーは戦場へ行った (角川文庫)

 

戦争に行って、四肢と顔半分が失われてしまったジョニーの話。周りからはただ呼吸をしているのみにしか見えず、意識があることさえ誰にも気づかれないままに、病院で治療を受けている。そんな夢も希望もない話。「命とは何か」というよくある命題さえ陳腐に感じてしまうヘビィさ。

この映画の映像をモチーフに、メタリカのONEという曲のプロモーションビデオが作られたらしい。でもメタリカ聞かないので、よく知りません。間違いだったらすみません(調べてない)

あまり内容を書くとネタバレになるけれど、クライマックスでは作者の怒りと情念が怒涛のほとばしりを見せてくれる。そこまで辿り着くために読みたくなる。
 

長距離走者の孤独

 

長距離走者の孤独 (新潮文庫)

長距離走者の孤独 (新潮文庫)

 

とにかく文体がカッコイイ。労働者階級の少年が悪態をつきながら、でも唯一自分にだけは正直に、世間のインチキに背を向けるような一人称の文章だ。

一節を引用すると

それに奴らはきまって、《わたし》とか《おれ》とか言うかわりに、《われわれ》とくる。たった一人の相手に対して、こっちには味方がたくさんいるぞという気がして、元気と正義感がわいてくるしくみだろう。

全編このような調子。僕はこのような吐き捨てるような口語調の文体に初めて出会ったので、衝撃的だった。とにかく文体のリズムと内容が痛快な小説。

 

悪童日記

 

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

 

 

戦時下の中で、母をなくした双子が、心ない老婆のもとで育てられながら残酷な日々をくぐり抜けていく話。その双子が感情をなくす努力や痛みを感じなくなる努力をしたりと、次第に人間を超越した怪物のようになっていく。ドライに突き放した文体がカッコイイ。

もし僕が「ハードコアな文学」というエントリーを書いたとしたらそちらに加えたい。徹底的に覚めきった無常感がある。

アゴタ・クリストフは他にも4編の長編を残しているが、だんだんとつまらなくなる。むしろ、この処女作で全てを出しきってしまった初期情動感がまたいい。
 

晩年

 

晩年 (新潮文庫)

晩年 (新潮文庫)

 

 

人間失格」 が有名すぎて、自意識過剰で自殺願望のあるジメジメした暗い作品ばかり書いている作家と誤解されているかもしれない。でもデビュー作に「晩年」とつけてしまうくらいパンクだ。この短篇集は、どの作品も怒りまくっていて血気盛ん。そしてバラエティにも飛んでいて、1つのCDアルバムのように楽しめる。
作品によっては明らかに文豪の世界を揶揄していたりと、若さと血気が溢れていて面白い。「鬼ヶ島」という短編が、最も殺傷力がある。
エレカシの宮本も太宰治が好きだと言っていて、それもうなづける。
 
以上、5作品を選んでみました。ちなみにこれらは、全て個人の見解です。異論はあると思っています。